球春到来! 甲子園では春のセンバツが始まり、プロ野球も開幕を待つばかり。そして大学野球も──。フィールドフォース社長・吉村尚記には、忘れることができない大学野球の名将との出会いがある。その出会いをきっかけに取り組みを始めた新たな営業形態は、今では社業の大きな柱の一つになっていて…。
失敗だった商品はひとつもない!

各種ネット類や簡易ケージといったチーム向けの大型商品から個人用練習ギアまで、数多くのアイテムが名を連ねる、フィールドフォースのラインアップ。2006年の創業以来、新商品が出なかった月はなく、今も続々と新商品が加わっている。毎月、絶えることなく新商品を開発し、上市し続けることは、暗黙の社内ルールでもあるのだ。
こうしたあまたの商品の中には、ヒット商品もあれば、あまり売れずに姿を消す商品も…。多くの新商品が生まれる分、廃番商品が増えてゆくのもまた、当然といえば当然ではある。それでも、吉村はこう断言する。
「これまで開発・販売してきた商品で、失敗だったものは一つもありません」
フィールドフォースの企業理念である「プレーヤーの真の力になる」という考えは当然、商品開発においても例外ではない。「良い商品が売れる」のか、「売れるのが良い商品」なのか──。少なくとも、この吉村の言は、たとえ売れない商品であっても、プレーヤーの力になるべく信念をもって作り上げた製品に失敗作はないのだ、という考えの発露にほかならない。
広がりをみせるフィールドフォースの商品ラインアップ
2006年の創業以来、フィールドフォースの商品開発におけるターゲットの中心は学童野球、少年野球の選手たちであった。
それは現在も変わっていない。バット、ボール使用禁止の公園をはじめとして、今も年々、野球に興じる子どもたちを取り巻く環境は厳しさを増すばかり。そんな中、彼ら年少プレーヤーに寄り添った、パートナー不要の練習ギアや、便利なアイテムを作り出し、提供してゆくことは、フィールドフォースの責務であり、存在理由でもある。
ただ、近年ではそれらに加えて、より幅広い選手層に向けた商品、さらに、野球に限らない他競技の選手たちを対象にした商品も数多く開発され、リリースされている。
こうした変化の大きな契機となっているのが、この数年来、フィールドフォースが力を入れている「外商」という営業形態だ。高校、大学の野球部や社会人チームのグラウンドや練習場にこちらから出向き、商品のプレゼンテーションを行いつつ、商談を行う。そこでのやり取りの中で直接、耳にする要望や意見は確実に、次なる新商品の開発に生かされてもいる。
ビッグネームがボールパーク足立に集合!?

まだコロナ禍の最中であった2022年5月のことだ。
吉村のスマートフォンに1通のメッセージが届いた。差出人は国学院大学野球部の鳥山泰孝監督。当時、直接の面識はなかった。
「同級生の飯塚智広さん(元NTT東日本監督)から連絡先を聞いて、メッセージをくれたんです。以前からフィールドフォースのことをご存じで、興味を持っていただいていたと。一度、会えませんか、ということでした」
国学院大といえば、その前年、2021年に東都大学リーグを春秋連覇しており、鳥山監督は時の人。一方で、飯塚さんと同期ということは、吉村とも同じ「昭和50年会」メンバー同士というつながりもある。
「井端塾のある日なら、ちょうど飯塚さんもボールパークにいるということで、それに合わせて足立に来ていただいたんです」
フィールドフォース本社が現在の千葉県柏市に移転する前、東京都足立区にあり、井端弘和さんがボールパークで「井端塾」を始めて間もないタイミング。飯塚さんも井端塾の講師として、子どもたちの指導に当たっていた。
日本代表(当時はU-12)監督の井端さん、都市対抗優勝監督の飯塚さん、東都大学リーグ連覇の鳥山監督…そうそうたるメンバーがその日、ボールパーク足立で顔をそろえたのだった。

「鳥山監督からは、その日の最初の商談で、ウチのアーム式マシンを一気に4台も発注いただいたんです。それで後日、納品のために国学院大の練習場にお邪魔して」
こうして始まった、両者の付き合い。吉村と鳥山監督は折に触れて連絡を取り合う間柄に。そして国学院大野球部は積極的にフィールドフォース製品を練習に取り入れ、選手育成やチームづくりに活用している。
「練習現場での会話から生まれた商品もあるんですよ」
吉村が振り返る。
「ボール回収トンボ(FBK-115T)なんかは、国学院大さんへの訪問がきっかけになって商品化されたんです。最初の商品動画は、国学院大の室内練習場で撮ったものだったと思いますよ。ほかに、油圧シリンダーにより微妙な高さ調節が簡単にできる、シリンダーティー(FBT-400)もそうですね」
そうして鳥山監督とやり取りを続ける中で、吉村の頭の中に「外商」というイメージが膨らんでいったのだという。
「社内で取り組むべきテーマとして『外商』を掲げたのは翌年、2023年でしたが、この頃、2022年の秋くらいには、私の頭の中では形になっていたんです」
国学院大との商談が「外商」のモデルに

鳥山監督との出会い、国学院大での商談が、吉村に与えたインパクトとは、どんなものだったのか。
「まず考えたんです。フィールドフォースとして、どうすれば鳥山監督の、国学院大野球部の力になることができるか…」
吉村が説明を始めた。
「それはつらい作業というわけではなく、むしろ新たな分野に挑戦する、ワクワクするような感覚でした。なんだか、パッと視界が開けたような気がしたんです」
フィールドフォースが「真の力になる」べきプレーヤーは、まさに今、目の前にもいるではないか──。
吉村がこの時に抱いた思いは、その後も大学、高校の野球部を訪ねて営業を重ねるにつれ、強くなるのだった。小さな子どもたちばかりではなく、学生野球のチームもまた、学校によりグラウンド事情や屋内練習場などの施設、機材と、それぞれ固有の制限ある環境下で、工夫しながら練習に取り組んでいるのだ。
「作らなければいけない製品が、まだこんなにたくさんあるじゃないか。そんなことに気づかされた思いだったんですよね」

外商というアイデアはこうして、吉村の中で具体的なイメージに変わっていったのだった。吉村はさらに続ける。
「それまでは、ものを作って売る、ボールパークという場所を提供する、子どもたちのためのスクール運営、というのをフィールドフォースの業務における3本柱と考えていたんですが、外商はこれから、これらに加わる第4の柱になる、という確信に近い思いに変わっていったんです」
外商に本腰を入れて取り組み始める一方で、フィールドフォースからの発信手段として、SNSを活用し始めたのもこの頃。すると、知り合いが知り合いを呼ぶ形で、営業先の紹介を受けることも増えていった。もちろん、直接売り上げにつながる案件ばかりではないが、商品に対するフィードバックや、ネットを通して実感することは難しい、現場の声を集約できるといった、これまでにはなかったプラス面もあった。
ボールパーク仙台は外商からのスタート!
2023年には、ライオンズベースボールアカデミーからの声掛けにより、同アカデミーとのやり取りが始まり、その関係は業務提携という形に発展した。さらには、それがきっかけとなり、埼玉西武ライオンズの球団からも商品の発注を受けることに。驚くことに、あれほど多くの用品メーカーや事業者が関係しているNPB球団にも、フィールドフォースの力を必要としてくれるプレーヤーがいたのだ(フィールドフォースの考える「プレーヤー」は選手に限らず、野球に関わるすべての人を指す)。
これもまた、外商のひとつの形といえるだろう。フィールドフォースは現在、ライオンズのほかにも楽天、阪神、日本ハム、ソフトバンクのNPB各球団傘下アカデミーと協力関係にある。

こうして、今ではフィールドフォースの営業には欠かせない、立派な柱となっている外商。4月1日のオープンを間近に控えた、ボールパーク仙台などは、その最たる例といえるだろう。
ボールパークという拠点ができる1年ほども前から、担当社員のボールパーク事業部・鈴木崇良は東北地方全域をひとり走り回り、外商を続けてきた。ボールパーク自体のオープンはカウントダウン状態とはいえ、まだこれからの話だが、「ボールパーク仙台」の知名度はすでにかなり高いようで、近隣のチームからは「待ってました」の声も聞く。
そして今では、柏本社やボールパーク仙台だけでなく、各拠点で、外商から始まった学校やチームとのつながりも多数。ますます広がりそうな外商でのやり取りから生まれる新商品も、増えてゆくはずだ。